実際に、自社単独でのウェブ事業展開を諦め、IT系企業とタッグを組んで情報収入の確保に動く事例は数多くあるが、そこで発生するジレンマとは、情報に対するコストの捉え方にある。我が国では新聞記者を1人雇用するのに年間約1100万円の直接費用がかかり、社会保険やオフィス、交通費、取材費など必要なコストを含めると2500万円程度の費用がかかる。
彼らを配置転換するなどしてウェブ部門を作った大手全国紙では、ほとんど同じコストのかかる人員を当初20人配置していた。帳簿上の年間コストは18億円にのぼり、さらにシステム投資も存在する。これらの新聞社公式サイトを経由して売り上げられた収入はわずかに年間8000万円程度であって、やればやるほど赤字の状況であることは容易に想像がつく。
一方、一般的なIT企業がウェブを維持するのに必要なランニング要員は年俸わずか450万円程度が相場で、PV(ページビュー=視聴回数)が10億を超えるニュースサイト部門でもそれをハンドリングするのに4人程度で回している。この事業では、大手検索サイトの広告ネットワークを効果的に使ってようやく売上は年間1億2000万円程度、2500万円ほどの黒字でギリギリ回っているという状況にある。ここまで切り詰めてようやく事業が成り立つか、という状況であり、新聞社のコスト体質では勝てないのは子供でも分かる。前述の新聞社のデジタル部門との間で事業競争力とかいう以前に、コスト体質がまるで違う、全然違う業界なのだことはご理解いただけるだろう。
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